Das Schicksal 運命-1

ちりちりと焦げる。
ぐずぐず燻った匂い。
うっすらとした白煙。
いよいよ燃え上がった火が絨毯に広がり、カーテンを駆け上がった。
炎と黒煙が吹き上がり、部屋を飲み込んで肥大していく。
 そこに一石が投じられた。

「静かにしろこの酔っ払い!」
ウィルはぶち破らんばかりの勢いでドアを蹴り開けた。
 安ホテルの寝室――黄ばんだカーテンは陽光を透さず、すっかりぺちゃんこになったベッドはスプリングが飛び出し、もとは白かっただろう壁紙は煙草のヤニでくすんでいる――に押し込まれたベッドには一人の男が横たわっていた。
「‥声。」
「ああそうだよ声だよ!さっきから熊みたいに唸りやがって!」
黒い山のような男が寝返りをうった。着ていた黒いコートがまくれて、仰向けになったのがわかる。男の手にはほとんど灰になった煙草が一本。落ちた灰がシーツに穴を開けていた。
「キセ、ル‥?」
「今度は何だよ!くそっ、酒に寝煙草かよ良いご身分だな、寝ぼけてんじゃねー!!」
ウィルはとうとう男の胸ぐらを掴んだ。力任せに揺さぶる。
「ん?ああ、ウィルか。おはよう」
ウィルが疲れて放り出そうという頃に、男は寝ぼけた目を開けた。