Das Schicksal 運命-3

 昼下がりのカフェテラス、通りに並んだテーブルは喧騒の中にあった。昼だからな、と呟いたメイズの向かいで桜色の和服を着た少女はコーヒーをすすっていたが、顔をしかめてテーブルにカップを置いた。
「山向こうに行こうかと思っている。ウィルは渋っているが――。わたしは行くつもりだ。オウカ、君も行くか」
「山向こう…?」
きょとんとして聞き返す桜花に、メイズは通りの奥を指差した。遠くに高い山々が連なっているのが、霞んで見える。
「あの山の向こう側だ。他の大陸があると言われている」
「新大陸?」
「そうだ。大きさはオーストラリア程だと聞いたが…。そこではこちらとは違う科学が発達しているらしい。彼女が興味を持ちそうな話だ」
メイズは煙草をくわえ、火をつける。桜花はコーヒーに角砂糖を一つ入れ、コーヒーをすするが、再び顔をしかめてカップを置いた。
「でも、いるとは限らない」
桜花の、細長い包みを握る力が強まる。包みの中身は少女の身長を超える長さの刀であり、少女はそれで数えきれない程の血を浴びてきたのだ。
 それもこれも全てあの女のせいだと、メイズは心中呟いた。
「いいや、いる。必ず」
断言するメイズに、桜花は理由を問う様な目を向ける。
 それには答えずに、メイズは立ち上がった。少女にはまだ言うわけにはいかないのだから。