300字SS「風穴」

 彼らの行く道を、我々が通してやらなければならない。颱苑たいえんは決意のさなか、自分の馬鹿馬鹿しさに笑った。彼らの叔父であり従姉妹である我々が、彼らを応援するのは――そう、これは応援と言うに相応しい――我々が彼らに希望を見いだしたからだ。それは、我々が勝手に見ているものに過ぎない。いつから彼らを導くなどと思い上がったのか。
 弟が、仕える一族の姫と恋に落ちた。
 我々は期待した。している。彼と彼女と、その娘が、我ら一族にとっての風穴になることを。
 タイ兄、呼ぶ声が、絶えない銃声に紛れている。颱宛は持ち上げた銃器の重みを確かめながら、思う。今はもう穴を開けるのは我々の仕事だ。お前達はただ、通り抜けていけと。

2016/4/2twitter300字SSに参加したもの。お題:風