この眼に映る姿を

 あおい髪の男が親指と人差し指で作った枠を覗き込んでいる。
「カメラ貸して! お願い!」
 妙に仰け反った姿勢の男がお願いしてくるのを、メイズは聞こえない振りした。そしてすぐ、男は落胆した声を上げる。被写体の彼の娘と、和服の少女がソフトクリームを舐めながらこちらに向かって歩き始めた。
 いい画だったのに。このケチハゲ。愚痴る声も聞こえるが、殴るのはまだ我慢だ。人目がある。
「母さんにも見せたかったのになー」
 父娘はこれみよがしに落胆の声を揃えた。
 今眼に見えているものは、今の自分にしか見えない。
 彼のかつての言葉には納得できる。だが、容量を娘の画像でまた埋めて良い理由にはならない。だが。母のためと言われてしまうと。


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Twitter300字SSに参加したもの。
お題:絵